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「この辺だよね?この前降ろしたの」
乱された髪を手櫛で直して俯いていたら、あっという間にもう家の近くまで来ていた。
「次の角を右に曲がったところにある、白いマンションです」
「ここかな?」
部長が窓からマンションを見上げている。
「そうです。ありがとうございました」
切ない気持ちを抱えながら明るく振る舞ってしまうのは、また素直になれなくなったせいだ。
もうこれでただの上司と部下になる。
素面で迫ったのに、思い切り拒否されたら、きっと次はない。
それに、部長だってもうしないと言っていたし……。
ロックを外してドアを開けようとしたと同時に、再び施錠される音がした。
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