97人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
「わ、わかった……」
そう言って頷くと流聖が嬉しそうにした。
そんな顔をしてくれるのなら、なんだってお願い聞いてしまいそう。
一度旅館に戻って二人で着替える。
着替え終わって流聖を見ると、案の定あたしを殺しに来ているのかと疑いたくなるようなかっこよさだった。
この人本当に怖い。
「人の顔ジッと見て、何?」
「流聖って底が知れない」
「は?」
怪訝そうな顔をしてため息をつく流聖。
それからあたしに手を差し出した。
「この格好で歩こう」
「うん」
もう一度手を繋いで外に出る。
たくさん同じようにカップルが歩いている。
皆幸せそうだな。
あたしも幸せだけど、愛莉ちゃんの事が頭をよぎってしまう。
流聖はもう愛莉ちゃんと元に戻るつもりはないって言ってたけど、それを愛莉ちゃんとちゃんと話し合った方がいいんじゃないかな。
だって愛莉ちゃんはまだ流聖の事が好きなんだから。
「何考えてるのか、何となく分かるけど」
「!!」
「今は俺とお前しかいないんだから、余計な事考えずに楽しめば?」
流聖にそう言われてあたしは流聖を見た。
優しく微笑む流聖。
……ああ、本当に好きだな。
「ごめん、そうだよね」
あたしは流聖に笑いかけて周りを見た。
「あ!あれ食べたい!!」
「お前本当に食べるの好きだな」
呆れながらも一緒についてきてくれる。
そんな流聖が好きだ。
二人でいっぱい写真を撮って、たくさんいろんなものを食べて。
旅行に来れて良かったな。
里奈に感謝しないと。
そんな事を考えているとスマホが震えた。
「花音?」
スマホを見てそう言うと流聖が首を傾げた。
「電話?」
「うん。どうしたんだろう?あたしが流聖と旅行中って知ってるはずなんだけど……」
まぁ花音の事だから、忘れてあたしにかけてきたって事も無くない。
流聖に断りを入れてあたしは電話に出た。
「花音?どうしたの?」
「千波!!助けて!!」
「は?」
切羽詰まったような声で助けを求める花音。
これはいつものような能天気な雰囲気じゃない。
冗談で言ってるようにも思えない。
花音が、泣いているからだ。
「花音……?」
「どうしよう……っ、どうしたらいい!?」
「ちょっと待って、何があったの?」
そう聞くと泣きながら花音が状況を伝えた。
「里奈が、行方不明になって……っ、中原くんが……っ」
「は……?」
「中原くんが、事故に遭って意識不明で……っ!!」
・
最初のコメントを投稿しよう!