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何も話さないのも、なんか寂しいな。
そう感じたあたしは吾妻くんをチラッとだけ見た。
聞いてもいいだろうか。
お昼の事。
あたしの勘が正しければ恐らく吾妻くんは里奈の事を……。
「……あのさ、吾妻くん」
「あ?んだよ」
「吾妻くんってその……里奈の事、好き?」
そう聞くと吾妻くんがピタッと足を止めた。
それから物凄く不機嫌な顔であたしを見てきた。
「……は?」
うわ、これマジで怒ってるやつだ!!
いやでも待って。
こんなに怒ってるって事は恐らく合ってる。
あたしはビクビクしながらも続けた。
「お昼にちょっと思ったんだよね。里奈と楽しそうに話してるし、里奈と中原くんの事寂しそうに見てたし……。ただの幼馴染みにそんな顔しないよね?」
そう言うと吾妻くんはため息をついた。
そして再び歩き出す。
「……だったら?」
「え?」
「だったら何?いくら俺が里奈を好きでも、里奈は親友の彼女。もう叶わないのに、好きなままは許されないわけ?」
その言葉にイラッとした。
何それ……。
なんでそんなやけくそなの?
「別にそんな事言ってない。そりゃ、里奈の彼氏は中原くんで、好きでも叶わないかもしれないよ。だけど、それで諦められるほど人を好きになるって簡単な事じゃないんでしょ?好きなままじゃいけないなんて一言も言ってない」
吾妻くんを睨んだまま言い切るあたしを吾妻くんは驚きながら見ていた。
「……お前、どんだけ残酷な事言ってるかわかってんの?」
「わ、わかってるよ。振り向いてもらえないかもしれないのに好きなままでいろとか、残酷だなって思う。だけどさ。中原くんには悪いけど、里奈が吾妻くんの方を好きになる可能性はゼロじゃないと思うから」
「いや。俺は彗斗から里奈を奪うつもりない。二人とも幸せそうだし、それでいいって思う」
「そんなの嘘だ!!」
吾妻くんの腕を掴んで引き止める。
吾妻くんの目に動揺が浮かんでいる。
「完全に諦めた人が、望みの薄い人を好きでい続けられるわけない!!可能性がないってわかってるなら吾妻くんは絶対すぐに諦めるはずだもん!!それでも好きなままなのは、どこかに可能性を感じてるからでしょ!?」
「なんなんだよお前……っ!俺の事何も知らないだろ!?」
「知らないから知ろうとしてんだろ!!」
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