花音と小島くん

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吾妻くんの協力を申し出た次の日。 あたしはジッと里奈を見つめていた。 里奈は確実にあの王子(中原くん)の事が好きだ。 今だって中原くんに貰ったポーチを見せびらかしている。 ……中原くんセンスいいな。 「どうした?千波。そんなに見つめても里奈のような美人には絶対なれないぞ。千波では」 「おい、花音。それはどういう事だ」 「言葉通りの意味」 「それが一番残酷な答え」 ため息をついて持っていた紙パックのジュースを飲む。 協力するとは言ったけど、まず吾妻くんがアクションを起こしてくれない限り何も出来ない。 あたしがいきなり吾妻くんいい人だよ!とか言い出しても、里奈達にとってあたしは『吾妻くんの彼女』だ。 『彼氏と仲良くやってんだな』って、それで終わってしまう。 彼氏じゃないけどな。 「そういえば今日ってこの間の小テスト返ってくるよね」 夕がグミを食べながらそう言うと花音が固まった。 「聞くのもアレなんだけど、花音ちゃんと解けたんだよね?」 「ちょっと夕、花音にそのセリフは酷でしょ」 里奈も小声で夕に注意してるけど、丸聞こえだ。 あたしは何も言わずに花音を見た。 花音はしばらく固まった状態でいて、次にニコッと笑った。 「あたしの歴史は邪馬台国で終わってるから」 「あー、これ完全にアウトだわ」 里奈が憐れむように言う。 あたしと夕も頷いた。 「本当に毎回思うけど、花音が部活入ってなくて良かったって思う」 「え?なんで?」 「だって部活に毎回遅刻するじゃん。補習あるから」 「なんだと!?千波!!部活入ってたらちゃんと勉強してるから!!」 「その心意気を何故今も遂行しないの」 眉を寄せてそう言うと花音は喉の奥で唸った。 授業が始まって案の定小テストが返される。 花音の席を見ると花音は紙を見つめたまま固まっていた。 ああ、アレは0点だったな。 幼馴染みだから花音の表情や仕草でなんとなく分かってしまう。 昔から花音は信じられないと思うと一点を見つめて固まる癖がある。 花音の頭の悪さ的に赤点は免れないけど、どこに自信があったのか……。 高校もよく入れたなと思うくらいだ。 授業が終わって花音は先生に呼び出しをくらった。 とぼとぼと戻って来ると花音はあたしの肩を掴んだ。 「なんでっ!!!!」 「何が!?」 突然『なんで』と言われても分かるわけない。 花音はあたしの机の上で項垂れた。 .
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