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「そういえばさ、ずっと聞きたかったんだけど」
「何?」
「流聖ってなんで千波の事好きになったの?」
里奈の質問に飲んでいたジュースを吹き出す。
吾妻くんは固まっていた。
それもそうだろう。
だって吾妻くんはあたしを好きなわけではない。
里奈が好きなんだから。
「流聖と千波って接点無かったよね?話した事あった?」
これは非常にまずい。
なんて言おうか迷っていると吾妻くんが口を開いた。
「……ある」
え?
果たして会話した事があっただろうか?
そう考えてからハッとする。
ああ、吾妻くんの嘘か。
「入学式のあと、女子から逃げるの手伝ってくれた」
その吾妻くんの言葉に花音が「あっ!」と言った。
「そうだ!確か物凄い数の女の子に追われてたよね?」
え?
なんで花音がノルの……?
ていうかコレ、嘘じゃない?
「あたしと千波、一瞬頭の中パニックだったよ。ウチの中学って平和だったからそんな光景見たことなかったし」
ケラケラ笑う花音を見ればコレが嘘ではない事がわかる。
おそらくそんな事件、あたしにとってはどうでもいい事だったから忘れたんだ。
「いやあ、あの時の千波はかっこよかったー」
「見ず知らずの俺の腕引っ張って近くの物置に突き飛ばしたからな」
「そうそう!何すんのかな?って思ってたらいきなり見ず知らずのイケメン突き飛ばしたんだから驚き」
「しかも行方聞いてくる女子に対して『皆の感じるイケメンと自分の感じるイケメンが違うから合ってるか分からないけど、とりあえずそこに歩いてるよ』って」
「通りすがりの地味目メガネ男子を指さしたんだよね!あの時の女の子達の顔、思い出すだけでウケる!」
あたし、そんな事したの……?
全く覚えてなくて頭を抱える。
里奈達は爆笑していた。
「それは千波らしいわ!!でも、千波は流聖の事も助けてくれてたんだね。やっぱ千波好きだなぁ」
里奈が感慨深くそう言う。
吾妻くんはそこからなにも言わずただパンを食べていた。
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