花音と小島くん

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「やっと終わった……」 解放されたのは18時を回った頃。 それでも小島くんと花音が一番早いという。 あたしも吾妻くんも頭を抱えていた。 「いやー、こんなに早く帰れるなんて初めて」 「いつも俺ら強制的に帰されるもんな」 こいつらホントマジか。 あたしが溜息をつくのと同時に吾妻くんも溜息をついた。 本日何度目の溜息か分からない。 「水戸黄門はリアルタイムで見れなかったけどね」 「大丈夫!録画してるから!!」 「だったらあたし要らなくなかった!?あたし巻き込んだこと謝って!!」 「まあまあ。今度お昼奢るから」 花音にそう言われて呆れる。 「お互い苦労するな」 小島くんと話してる花音から目を逸らして吾妻くんを見る。 吾妻くんも疲れた顔をしている。 「小島くんが花音と同じレベルだとは思ってなかったよ」 「毎回同じ補習受けてんだから、だいたい一緒だろ」 「ああ、そっか」 だとしたらこの時間に帰れたのは奇跡としか言い様がない。 めっちゃお腹空いた。 「深影にも教えてくれてありがとな」 「え?」 「芦原だけじゃなくて深影の事も気にしてくれてただろ、さっき」 「だって小島くん、信じられない回答ばっか書いてるんだもん。嫌でも目に入る」 「麦わらの一味には驚かされたな」 「あれ本当に」 二人で顔を見合わせて笑う。 吾妻くんがこんなに楽しそうに笑っているのを初めて見た。 少しでも友達として近づけただろうか。 この人のこの笑顔を守りたいと、自然と思った。 ねぇ里奈、気づいて。 吾妻くんは里奈が好きなんだって。 ……だけど里奈が気づいたら里奈はどうするんだろう。 ふとそう思ってしまったが、あたしは頭を軽く振って考えないようにした。 .
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