99人が本棚に入れています
本棚に追加
相変わらずの二人のやりとりに溜息をつく。
それから吾妻くんを見た。
「……なんで断らなかったの?」
こっそり二人に聞えないように聞いてみる。
吾妻くんはあたしを見て口を開いた。
「お前の幼馴染みなんだろ?葦原」
「うん」
「俺にまでお礼したいって言ってくれてちょっと嬉しかったし、それに何もする事無かったし。しかも俺が断ったらお前、あの二人の相手、一人でしないとだろ」
騒がしい二人に目をやって顔をしかめる。
あの二人を一人で相手に出来る自信は無い。
「ありがとう、来てくれて」
「ううん。深影に勉強教えてくれたお礼。それから、深影のため」
「え?」
それ以上は何も言わなかった。
あたしは吾妻くんから目を二人に移した。
カフェを出て歩き出す。
やっぱり吾妻くんは人の目を引くようで、周りからよく見られていた。
本人は慣れているのか気にしていないようだった。
まあ、あたしも昔から花音が人の目を引く人だったから慣れてるんだけど。
花音は黙って居れば普通に可愛い。
小島くんも見た目はかわいい系男子だ。
そんな三人と一緒にいるモブ。
……自分がどうしてここにいるのか不思議で仕方ない。
「やってきました!遊園地!」
「なんで」
テンションが上がっている花音と小島くんにあたしと吾妻くんは険しい表情を向ける。
「来たかったから」
「あたしと吾妻くんのお礼じゃなかったの!?」
「それもあるって!でもやっぱり楽しくないと!」
そうだった、花音はこういうやつだ。
「なんかごめんね吾妻くん……」
「遊園地とか、いつから来てないんだろう」
吾妻くんの遠い目。
本当に申し訳ない。
「やっぱり入場したからには全力で楽しむしかないよね!!」
「うん、そうして」
「何から行く!?」
「花音と小島くん、二人で行ってこい」
そう言うと何故か小島くんに両肩を掴まれた。
「何?」
「水野、ちょっと来て」
そのまま小島くんに連れて行かれるあたし。
首を傾げているとちょっと離れたところで小島くんが立ち止まった。
・
最初のコメントを投稿しよう!