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「やっぱ疲れた時には甘いものだと思う」
「うん」
「糖分が足りないと生きていけないからさ」
「うん」
「と、言うわけで……いただきまーす!」
「待て待て待て待て!!」
ナイフとフォークを両手に持って今にもパンケーキを食べようとしている夕の手を掴む。
そしてあたしは前に座る美男子をゆっくり見た。
その美男子、大野くんは相変わらず眠そうで、それでいて物憂げな表情でパンケーキを見つめていた。
何故あたしが夕と大野くんとこんなオシャレなカフェに来ているのかと言うと、話しは少し前に遡る……。
「画材屋って初めて行くかも」
「まぁ千波は行かないよね。美術好きなわけでもないし」
夕から誘われて一緒に画材屋へ行く事になった。
夕が使っている絵の具がもうすぐ切れそうらしい。
「そういえば聞いたけど、吾妻くんと遊園地行ったんだって?」
「あー……花音と小島くんに誘われて」
「なんだかんだ順調なんだ。ゲームから始まったのに」
順調、なのだろうか?
幸いな事にまだバレてはいない。
でも確かに、吾妻くんが前より少しだけ優しくなった気がする。
……本当に少しだけだけど。
「なんか千波と吾妻くん見てるとさ、あたしも彼氏欲しくなってくるんだよね」
「なんで?」
「だって楽しそうだから」
楽しそう……?
……は?
あたしと吾妻くんの何を見て楽しそうと言っているのか全く分からない。
理解不能だ。
変な顔で夕を見ているけど夕はあたしを見ずにそのまま続けた。
「でもさ、好きってどういうものか分からないからあたしには無理かな」
「分からない?」
「うん。告白されても、あたしのどこがいいのか分からないし、そもそも関わりあんまり無いのに『好き』とか言われても付き合えるわけないし」
遠回しに告白されてる自慢されている気がするのは気のせいだろうか。
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