夕と大野くん

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夕と一緒に画材屋へたどり着いてからのあたしは色々な物に目移りしてしまって大変だった。 なんだか凄くワクワクするものがたくさんある!! あたしには夕みたいな芸術の才能はないから基本的にこれらの道具は必要ない。 でもなんだか欲しくなってくる不思議。 どうせ買っても使わないからお金の無駄遣いになるというのに。 「この絵の具使い心地良かったんだよねー。ちょっと高いけど」 「絵の具ってなんか違いがあるの?」 「もちろん。使ってみないと分からないから新しい物買う時ってドキドキするけど、使ってみて良かったときは本当に嬉しい」 「へー」 「この絵の具凄く伸びが良くて塗りやすいんだよね。これにしよっかなー」 そう言いながら新発売と書かれた絵の具と、元々使っていた絵の具を手にとって悩む夕。 そういえば……。 「ねえ、夕がこの間出したコンクールの絵ってどうなったの?」 「ああ、あれね。金賞取って今は市役所に展示中」 「市役所!?展示!?すごっ!!」 「別に凄くないよ。周りの人よりあたしの描いた絵が上だったってだけ」 「なんか腹立つけど凄いって!!今度見に行く!!」 「本当に千波ってあたしの絵、好きだよね」 呆れながらも嬉しそうな夕。 夕は本当に自分の才能に気づいていない。 本当に凄いことなのに、本人は自信が無い。 あたしなんて花音に『化け物を描く才能だけはある』って言われるくらいの画伯なのに。 あれ? 市役所って事は……。 あたしはスマホを取り出して市役所を検索した。 思った通り、夕の作品はネットに写っていた。 綺麗な雪の絵。 めっちゃ綺麗……。 でも……。 「今、7月だけどな」 「え?何?」 「いや、なんで夕はこの季節に雪の絵なんか描いたの?季節感0?」 そう言うと夕は少し考えてから口を開いた。 「それ描いてるとき、目に入ったのが大野くんなんだよね」 「は?大野くん?」 「あの人ってなんか雪っぽくない?」 「そう?眠そうだからじゃない?」 「そうじゃなくて、なんとなくだけど雪を連想させるなって思って。大野くんを見てたら不思議と描けた」 ・
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