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――遡ること五時間前。
「こら待て懐幾ィィィ!」
「また逃げる気かァァァ!」
「さっさと借金返しやがれェェェ!」
「だ が 断 る !」
昼前にも関わらず薄暗い裏路地。そこでの追いかけっこは最早僕の日常だった。
無論、10代でそんな借金なんて背負う筈もなく、借金を作った親が夜逃げしたから仕方なく(?)追われてあげてるだけだ。
「へっ、そこの路地は行き止まりだぜ!」
「年貢の納め時だな!」
「さあ、返して貰おうか!」
「……君達頭が悪いんだね、返せる金があれば逃げないしこんな子供が大金を持ってると思うの?」
目の前の壁を越える方法を模索しながら問いかける。
このムキムキなおじさん達は脳もムキムキなようだ。
「ああ!」
「右に同じ!」
「左に同じ!」
「……無論、そんな金は無いけど?」
「ならば貴様の!」
「「体で返せェェェ!!」」
「うお危ない」
繰り出された右ストレートを間一髪でかわす。つーかこいつら三つ子か何かだろ息が合いすぎてて最早気持ち悪い。
「ふっ、運が良いようだなぁ!」
「だが!お前の逃げ場は無い!」
「さあ!観念するんだな!」
「さあ?それはどうかな?」
「お待たせー」
「「「!?」」」
声が響いてきたのは遥か上空。見上げると、そこにいたのは箒に跨がり、風に靡く黒髪を弄りながらこちらを見下ろす女の子だった。
「遅いよ……華音」
「ごめんねー、色々忙しくってー」
華音はニコニコとしながら謝っていた。特に反省しているようには見えなかったけど、まあそういう奴だから特に気にはしない。
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