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「…太田さん…?僕、また、泣かせるような事をしたのか…?」
野城の言葉は、潮風に流されていくように、静かだった。
廊下で一般観光客が行き来する中、二人は見つめ合っていた。
「そ、そんなことはないよ!」
あたふたと答える奈央子。
「……うん」
野城は困惑した表情になっていた。奈央子は彼の手首を掴んだまま、言う。
「実は!そのね、私、ちょっと野城くんに…そ、相談したい事があるの!!」
「えっ、今!?」
野城は驚いた表情で、左手首の腕時計を見た。
「うん!今!」
「でもさ、僕は班の皆が待ってるんだ。もう随分と待たせてるし…何も、今じゃなくても。帰って来てからでも良い?」
「でも…!」
しかし、その時、奈央子の携帯電話の着信音が鳴った。
「わ、メール」
ピッ
『誰かに話す事は、許されない。お前は常に見られている』
奈央子の動きは止まった。
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