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「それを…壊したいんだね?」
野城も水飲み機のところへ歩きながら、奈央子の背後から優しい口調で、ゆっくりとそう言った。
「こ、これで壊れたかな…?」と野城を見上げて不安げに話す奈央子。
「さぁ。防水カバーがすっぽり覆ってるみたいだけど。中身をこじ開けて、分解でもしない限りは、無理じゃない?」
「……な」
「でも太田さん。単純に考えてさ、ゴミ箱とかに捨てりゃ良いんじゃない?」
すると野城は奈央子の右手から、一円玉―…いや盗聴器を取り上げて、スタスタと数歩歩いたかと思うと、ゴミ箱の中にそれを落とした。
蓋付きのステンレス製のゴミ箱の中身は、外からはあまり見えない。 ゴミ箱の中に入っている物は、蓋を外さない限りは分からなかった。
そして、野城が奈央子の元に戻って来た。
「じゃあ僕、そろそろ本当に行かないと、班の皆が…」
「の、野城くん!ちょっとこっち来て!」
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