第1章

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この大学の寮が二人一部屋のルームシェア制なのは何故なのだろう。勿論アパートを借りるよりは安いが、ルームメイトは大抵初対面の上、相性が悪い奴とシェアする事になった場合最悪である。 今部屋をシェアしている彼、大月平安についての俺の第一印象は、まさにその「最悪」だった。 朝はきちんと起きてこない夜はきちんと帰ってこない女は連れ込む、挙句掃除洗濯全てが俺任せときては、そういう印象を持たない方がどうかしている。 俺も奴も男だし、家事をしないで育ったとしても不思議ではない。だがそれでも共同生活である。迷惑を被るこちらの身にもなってくれ、と言いたい日々が続いたのを覚えている。…まあ、俺も途中から言うのも億劫になって、最低限の事しかしなくなったし、そもそも食事なんて最初から一人分しか作らなかったけど。 そんな平安と打ち解けて話をするようになったのは、俺がインフルエンザで完全ダウンした去年の初冬がきっかけだった。なぜか平安は看病するといって聞かず、慣れない手つきで掃除洗濯を始めたのだ。 だが一度も家事をしたことがない彼がやったってうまくいくはずがない。案の定皿を割り、洗剤の入れ方を間違え、粥を焦がした。 だが、いつものスカした平安はそこになく、明るい茶髪と洒落たシャツをぐしゃぐしゃにして、皿数枚と自分のシャツ…俺がいつもお洒落着洗剤で別個に洗っていたものだ…を犠牲にして、平安はそれでも家事をやり抜いた。そして快復した俺に頭を下げた。 俺としても今更彼とのシェアを解消するわけにはいかない。それに必死の平安はいつもの無気力な彼とは明らかに違っていたし、それが本来の彼だという確信みたいなものも感じた俺は、最低限の要求を飲ませて、引き続き共同生活を再開することにした。 平安はそれ以来少しずつ変わったと思う。以前は自堕落どころか自虐的にさえ見えた生活習慣が少しずつ改善されて、俺に自分の食事も要求してくる代わりに、始めたアルバイトで食費を入れるようになった。苦学生である俺にとってはありがたい話である。 それ以来、平安とは比較的良好な関係が続いている。 ただし、俺と平安との関係は、俺の予想のはるか斜め上へ発展していった。 今年の夏、今度は平安が風邪をひいてダウン。気が弱った平安の口から衝撃の告白が始まり、泡を食った俺はこの告白を受けねば彼が死ぬのではと焦り、そこからなし崩しの関係へ発展した。
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