第1章

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第一印象は、最悪だった。 俺が倒れた時、知らなかった必死の平安に評価を改めた。 彼が倒れた時、その願いに応えてやりたいと考えるくらいには親しくなった。 …そして最近、同意の末にもう一つ発展した関係になったということは、俺自身も平安を嫌ってはいないのだろう。 …とはいえ、である。 「ヤりたいんだからヤりてぇつって何が悪いんだよ」 「そう思うんなら今何時か言ってみろ」 ふて腐れた顔をする平安に、俺は腰に手をやって唸る。今まだ日が高い時間帯だ。とてもそういう行為にふさわしい時間とは思えない。 平安はちらりと壁掛けの時計を見上げ、しれっとつぶやいて返した。 「土曜日の3時26分」 「…そんな時間から要求する行為か?」 「時間関係なくね?」 いや、大いにある気がするぞ。 「あんたがコーヒー淹れてるの見てムラってきた。のでヤりてぇ」 「俺のせいか!」 ティッシュをごみ箱へ放りながら叫ぶ。綺麗な放物線を描いて飛んだ紙くずは、そのままごみ箱へ吸い込まれた。その手をぱしっと掴まれ、座ったままの平安のそばへ引き寄せられる。 「ちょっと待て、危な…!」 「だってあんた夜は夜で朝早いからって嫌がるし。いつならいいの」 「そうは言うがな、いつも雰囲気も何もない、覚えたての高校生みたいな誘い方して、いろいろぶち壊しにするのはどこのどいつだ!?」 腕一本の攻防戦。不意打ちで隣に腰を下ろした俺に近づこうとする平安と、それを押しとどめる俺。俺の抗議を聞いて、平安はニヤリと笑った。 「なんだ。時間帯なんてやっぱ関係ないじゃん。てかムード重視とか、あんた割とロマンチスト」 「う、うるさいっ!」 「でも、…そか。つまりあんたがその気になるようなムードに持っていけばいいわけだよな」 「ならん!その気になんかならんから!」 「そう?…じゃ、やってみようぜ」
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