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「……な……どうして……」
そこまで知っている、という言葉を飲み込んだのが分かった。
「さあ、来いよ」
さらに身を突き出す。
「最初の狙い通りお前の獲物になってやるぜ? まあ、あんたの錆びたバターナイフじゃ、オレに傷一つつけることなんて出来ないかもしんねえけどな?」
男の表情が変わった。
自慢の『相棒』を馬鹿にされたのが余程頭に来たようだ。今まで戸惑っていた瞳がぎらりと光を帯び、見る間に頬が上気していく。
「こっ、の……! 調子に乗るんじゃねえぞ、ジルベルト!」
男は絶叫する。血走った眼。唇の端から白い泡を飛び散らしながら、大きく腕を振り上げた。
見え見えの挑発に易々と乗る。だからいつまでたってもザコなのだ!
男はオレの心中など知る由もなく、掴みかかるような勢いでナイフの切っ先を首筋目がけて振り下ろす。
――のろい!
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