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心の中で不安は確信に変わった。
直後に、じわじわと胸を掻き毟りたくなるような強い後悔が押し寄せた。
「オレのせい……だから?」
芯の抜けたような声が自分の喉から漏れた。先生は黙ったまま、否定も肯定もしない。
ヒビの入った先生の丸いメガネレンズ。その奥で瞬く先生の瞳とぶつかり、オレはそれ以上言葉を重ねることができなかった。
頭の中で凄惨な映像がまるで映画のトレーラーのごとく鮮やかに蘇る。
瓦礫と化した部屋、猛々しく燃え盛る紅蓮の炎、引き裂かれた悲鳴と断末魔、耳を塞ぎたくなるような徹底した破壊音。壁や床に飛び散る赤は、蛍光灯の光に反射してぬらぬらと異様な光を湛えていて……。
ああ――、とたまらず自分の顔を両手で覆った。
――それらは全て、さっきまで自分がいたあの<白い建物>の中で起こった現実の出来事だ。
――そして、それは紛れもないこのオレが引き起こしたことだ。
指先が震えた。寒さのせいなのか、恐れのせいなのかは分からない。
「私は、戻らなければならない」
唐突に放たれた先生の言葉に、はっとして顔を上げる。モドル?
「何言ってるの先生。どうして戻るなんて言うの?」
「……やり残したことがあるんだ」
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