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「そ、そんな。戻っちゃだめだよ! 先生までバラバラにされちゃう!」
けれど、先生はゆるゆると首を横に振る。
「じゃあ、オレもいっしょにいく! ねえ、いいでしょ」
「だめだ。私はお前まで失いたくはない」
ぴしゃりと言い放った先生の言葉は、反論も問いかけも許さないといった強い拒絶が含まれていた。
「私は自分の手で決着を着けなければいけないんだ」
雨音がふいに遠ざかった。地面がぐらりと波打った気がする。それは自分の感覚のせいだろう。
「オレのせいだ、オレがあんなことをしたせいだ」
「自分を責めるな、お前だけのせいじゃない」
「だけど!」
「あれは私の責任だ」
唇を噛んだ。そうじゃない、先生のそんな言葉を聞きたいわけじゃない。
どうしたら先生を止められるんだろう。
「――ジルベルト・クロフという名はどうだ」
唐突にそう呼びかけられ、それが自分に向けて放たれた言葉だと気が付かず「えっ?」と間抜けた声で応えた。
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