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「お前の新しい名前だ」
「……オレの?」
「なかなかいい名前じゃないか?」
今まで固く強張っていた先生の表情が、若干緩やかになった。
「まあ、気に入らなければ違う名を名乗ればいい。その名前じゃもうだめだから」
「どういうこと?」
「そのうち分かる」
押し黙るオレに、先生は一枚の紙切れを差し出した。雨に濡れて、若干インクが滲んでいるがうっすらと『ベイストリート孤児院』という文字と、簡単な略図が読み取れた。
「私が世話になった孤児院までの地図だ。お前はここに行きなさい」
「そ、それって」
遠くで何かが激しく壊れる音がした。
びくりと思わず身を縮める。
先生は音の方角に厳しい視線を向けながら、
「お前には本当にすまないことをしたね、ジルベルト。けれど誤解してほしくない。私がしたことは、紛れもなく正義の行いだったのだよ」
「……イヴァン先生」
そこで、先生はふっと息をついた。
「ジルベルト、もしも私の身に何かあったらミアをどうか守ってほしい」
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