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先生は、最後にくしゃりとオレの髪を撫で、路地の奥へと足を踏み出す。
「待って、いやだ。先生、いっしょに連れていって。オレをおいてかないで」
尚も追い縋るようにして掴んだ手を半ば強引に引き剥がされた。白衣をひらりと翻したかと思うと、呼び止める暇もなく先生は来た道を駆け抜けていく。
「先生! やだよ、いかないでよお――!」
遠ざかる先生の体が、白く激しく降りしきる雨に掻き消えていった。
オレにとってすべてだった、イヴァン・ナイトレイ。
だがこの日、オレの犯した過ちのせいで彼は二度と戻ることはなかった。
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