第1章 真夜中の都市伝説

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 薄暗い部屋の片隅で、乱雑に積み重ねられた古い四台のテレビ。廃品置き場から拾ってきた代物だけに、白黒の画面がちらちらと明滅を繰り返し耳障りなノイズも消えることがない。  ブラウン管が映すのは、喜劇に青春ドラマ、戦争映画にドキュメンタリーだ。画面の中でそれぞれの役者が入れ代わり立ち代わり与えられた役を熱演している。  狭い室内に笑い声と絶叫、拍手と混じって銃撃音が止めどなく響き渡っていた。映像も音声も最悪だったが、内容が把握できれば気にならない。  テレビ画面が良く見えるようにと、部屋の中央にどっかりと据え置いたソファが姿勢を変える度に激しく軋む。足を組み直しただけで、キイギイと嫌な音を立てた。  …………。  ソファの背後で立ち竦む男が、微かに身動ぎしたのが分かった。  小心な男。  殺意だけはありありと感じ取れるのに動くことすらできないとは。鑑賞していた番組がCMに切り替わったタイミングで、 「先に斬らせてやろうか」
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