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「なんだ?」
「ボクそう思わないんだ。確かにボクのお父さんは人間に殺された。でも、それは不幸なお互いの誤解からだったんだ。お互い時間をかけて理解しあえばきっと平和に一緒にくらせると思うんだ。人間にはない力が鬼にはあり、鬼にはない知恵が人間にはある。鬼と人間が力を合わせればいろんなことができるようになってお互い幸せになると思うんだ。」
赤鬼の言葉に青鬼は驚いたようにしばらく口を閉じました。
そして肩をすぼめ、大きなため息をひとつつきました。
「赤鬼よ・・・それは夢物語だ。おまえさんがどんなそう思っても相手はそう思っちゃくれねぇ。」
「大丈夫だよ。ボクはできると思うんだ。だってボクは人間と鬼の間に生まれたんだから。」
「鬼の里ですら相手にされなかったおまえさんが、あのずる賢い人間に受け入れられるかね・・。」
赤鬼の言葉に青鬼は思わず辛辣な言葉で返してしまいました。
それが赤鬼にとって刃のような鋭さで傷つける言葉であることを青鬼は知っていましたが、それを止めることはできませんでした。
「・・・。」
青鬼の言葉に案の定、赤鬼が下を向いて黙り込んでしまいました。
「すまん。すまん。そういうつもりで言ったわけじゃねぇんだ。要は気をつけろ。そう言いたいだけさ。おまえさんの邪魔をするつもりじゃねぇ。」
青鬼は慌てて、赤鬼の肩を抱き言いました。後悔の念が青鬼を包んでいました。
「ありがとう。」
小さな声で赤鬼は言いました。
「困ったことがあればいつでも相談にのるぜ。じゃあな。」
鬼の里で嫌われ者の青鬼でしたが、なぜか赤鬼に対しては優しい気持ちになってしまうのでした。
鬼と人間の間に生まれ、どこにも居場所のない赤鬼とじぶんを重ね合わせたのかもしれません。
その頃。
人間の里の方でもあるできごとが起こっていました。
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