5人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいかい。ふらんしす。鬼は人を見境なく襲うから。おまえのパパも鬼に襲われて・・。」
「その話はやめて!」
少女は鋭く叫びました。
そうです。
数年前、鬼に襲われた里の者というのは、この少女の父親でした。
母親は少女を生んですぐに、山で行方知れずになっており、父親が亡くなって天涯孤独になった少女をこの狩人が親代わりに面倒をみていました。
「・・・そうだったな・・。すまん。」
少女を傷つけたと思い、狩人は慌ててあやまりました。
少女と狩人の関係は親子のようであり、兄妹のようであり、とても微妙な関係なのです。
「・・・でもこの辺に鬼が棲んでるってほんと?」
そんな狩人の気持ちをよそに少女はあどけない好奇心いっぱいの表情で狩人にたずねました。
「そうらしい。噂だけどな。」
鬼の里は山の奥深くにあり、人里からは遠く離れているのですが、最近、人里近いところに赤い鬼が棲みついてるという噂が里でながれていました。
そのときです。
「あのう。」
ふたりのうしろから突然声がしました。
「わーーーー!」
ふたりは飛び上がって驚きました。
ふりかえると、そこには不思議なかっこうをした若者が立っていました。
頭は長い髪をポニーテールのようにくくり、だぶだぶの見たことのない服を着て、腰にはこれまた見たことのない刀を長いのと短いのを腰にぶら下げていました。肌の色はこのあたりの者ではない黄色い肌の色をしていました。
瞳は黒く、鼻は低く、若者ではありますが驚くほど背が低く、足が短い、それでいて醜くはなく、さわやかでいかにも元気のいい若者でした。
若者のそばには、犬と猿と雉がいました。
「驚かせてすみません。ボク、桃太郎といいます。実は鬼を退治しにやってきました。」
驚くふたりに若者は朗らかに言いました。
最初のコメントを投稿しよう!