磁石

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ナオは無邪気に答えた。 「ん、オレはNで咲陽はSだろ!?」 アタシ達のイニシャルか! 思わず笑みが零れた… アタシには、そんなクダラナイこじ付けでも 運命みたく思えた。 そっか… 方位磁石は狂ってなんかない… きっとあの日から、ナオに向いてたんだ! ただ、針が揺れて… 迷ってしまってたんだ… 「つか、驚いた! 店長って呼ばれてたよな? 咲陽らしいけど… すげぇ、頑張ったんだな」 なんか… その言葉だけで報われる… 「余裕だし。 ナオは? 仕事どーなったんだ?」 「オレはF(県)戻って、一人親方から始めて… 今やっと、尚建よりはデカい会社にしたよ」 「マジでかっ!?」 やっぱすげぇな、ナオ!! 「けど… 待たせてごめんな…」 アタシの髪に、指を絡めて撫でる… 愛しさが込み上げてきた。 「ヘーキだよ… 信じてたから」 まっすぐナオを見つめた。 揺らいだナオの瞳が艶っぽく変わって… 「キスして い?」 だから、聞くなって… 「バーカ」 そして、笑い合うアタシ達。 なんか、お互い照れくさくて… ジャレ合うように…唇を重ねた。
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