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コツンと指先が硬いものに触れた。
反射的にソレを掴む。
きっと、これだ。アルの言う電話とは。
震える手で画面に指を滑らせると仄かに眩しい液晶画面の光が目を貫いた。
昼でよかったと思う。
......ところで、これどうやって使うんですか。
そもそも魔法って魔法の杖的なアレでアレするんじゃねぇの?何で電話?
まだ折り畳み式のじゃなかっただけマシだが。
色々言いたい事がありすぎる。
「もしもし?」
とりあえずホーム画面を開いたまま、耳に当てた。
自分でも馬鹿みたいな事をしている自覚はある。普通に使うとしても、まずは電話番号を入力しなければいけないというのに何故か俺はその工程をぶっ飛ばして、しかも通話音が鳴らないままに話を始めるという、側から見たら愚かでしかない行動をしていた。
でも、仕方ないだろ!使い方はわかんねぇし、アルは銃を向けてくるし!
とりあえず誤魔化せるかなーぐらいにしか考えてねぇよ!俺だって。
一瞬の沈黙が流れる。
聞こえるのはアルの構えている銃の重そうな音と、互いの息遣いだけだ。
アルの呼吸よりも僅かばかり俺の呼吸の方が早い。緊張している証拠だった。
......トゥル、トゥルルルル。
「は?」
何も押していない。けれど何故か呼び出し音が鳴り始めた。
ちょ待てよ、思わず某俳優のモノマネのような口ぶりで言葉を零すとプツンと呼び出し音が途切れる。
......俺にどうしろと。いっそのこと思考を放棄してしまいたかった。アルの拳銃がソレを許すはずもないけど。
「あー、とりあえず火の玉でも出せばいいの?」
アルに問いかけた瞬間、ボウッと音を立てて俺たちの周りを火の玉が囲いこんだ。
熱い、熱い!思わず電話を落としてしまった。
其れに倣って火の玉も消える。
「結構、凄いね。」
そう言いながら、アルは俺の右肩を迷うことなく撃ち抜いた。レーザービームだった。
......もう意味が分からない。
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