[2]さよならが言えなくて

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【Side 疾風】 扉を開けようとドアをノックした時、中で何かが落ちる音がした。 どうしたのかと返事を待たずにドアを開ければ、一番奥、窓を背にした机の向こう側に倒れている人影が飛び込んできた。 それが誰かなんて、聞かなくてもわかる。 やはり限界だったのか。 叫んだ声は聞こえていないのか完全に意識を失っている。 右手は左の胸を抑え、息は薄れている。 ただの過労や貧血じゃない事くらい一目瞭然。 なんとかしなくてはと彼を抱え上げ保健室へと急いだ。 時間が時間なだけあり、途中ですれ違う生徒がいなかったのは幸いだった。 こんなところ一般生徒にでも見られたら今日中に大変な噂が流れる。 「どうしたの?」 血相を変えて飛び込んだ俺に保健医である朝倉が静かに尋ねる。 ベッドに寝かせた早乙女に聴診器をあて、苦い顔をした朝倉が心臓マッサージを始める。 何が何だかわからない俺はただそれを見つめる事しか出来なかった。 「ここに救急車は呼べないから、僕が彼を病院に連れて行く。君はとりあえず理事長に知らせて」 どこかへ連絡をした後、すぐに彼を抱え上げた朝倉。 彼の顔に色はなくて。 彼は息をしてる? 彼の心臓は動いてる? 彼は、生きてる…? 俺はそんな考えを頭から振り払い、言われるがまま保健室を飛び出し理事長室へ向かった。
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