[2]さよならが言えなくて

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【Side 疾風】 車に乗って30分くらいで着いた先はもちろん病院。 スムーズに駐車し、車を降りた理事長に続き中へと急ぐ。 理事長は看護師らしき人に何やら声をかけ、奥へと進んだ。 その先に見えてきたのは、『手術中』と書かれたプレートが赤く光る扉。 その前に並べられたソファーにはすでに朝倉先生が座っており、その向かいに理事長が腰掛けた。 俺は止まっていることなどできず、ウロウロと歩き回る。 理事長も朝倉先生もそれを止めようとはしない。 本当は自分だってジっとしていられないんだ。 誰も口を開かず、沈黙がただひたすら続いた。 随分と長い沈黙の後、カチッという音と共にランプの光が消えた。 それに続くように扉が開き、中から手袋を外しながら医師が出てきた。 「なんとか一命は取り留めました」 マスクを外しながらのその言葉にそこにいた全員が安堵する。 気が抜けるとはこういうことを言うのだろう。 足に力が入らず、腰からソファーに落ちる。 本当に怖かった。 死をこんなに間近に感じるなんてこと初めてで。 医師に続いて出てきた早乙女は酸素マスクと点滴をして眠っていた。 息をしてる。 ただそれだけのことに安堵する。 俺の不安など余所に、ただ寝ているだけのようだった。 まるで、何もなかったかのように。
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