[2]さよならが言えなくて

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【Side 疾風】 早乙女の病室は1人部屋。 まるで生かされてるかのように、機械に繋がれていた。 静かな病室に響く機械音。 そこにノックの音がしたのは、それから1時間くらい後だった。 入ってきたのは早乙女に似た綺麗な女の人と、背が高く、誰もが振り返るようなイケメンな男の人。 2人とも30過ぎくらいだろうか、やけに若い。 今の状況と理事長の反応から察するに、早乙女の両親だろう。 息子が倒れて危険な状態だってときに平然としていられる2人はどんな神経をしているんだ。 「早乙女さん」 2人が入ってきた少し後、病室に先ほどの医師が入ってきた。 話があるという医師に続いて出て行く2人。 何故か理事長と保険医もついていった。 残された俺は、早乙女の寝ているベッドの隣に置いてある丸椅子に座り、ジッと彼の綺麗な寝顔を眺めた。 安定した機械の音で彼が生きていることを実感しながら。 数分後、トイレに行った帰りに声が聞こえてきた。 「ここ最近薬を飲んでいなかったみたいですね」 それは確かにさっき病室に訪れた医師のもの。 「睡眠不足と栄養失調で免疫力がかなり低下しているので、更に危険な状態です。もしかしたら、このまま………」 告げられた言葉にドアの外から息を呑む。 「私の監督不行きだ、申し訳ない」 きっと頭を下げているであろう理事長の声。 「構わないよ。こうなることは覚悟の上だ」 男の人の声。 きっと早乙女の父親のもの。 俺はここで会話を聞くのを止めた。 先を聞くのが怖かったから。 もしかしたら医師から残りの時間を告げられるかもしれない。 それを聞くことは俺にはできない。 中にバレないよう静かにその場を離れ、早乙女の眠る病室に戻った。
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