[2]さよならが言えなくて

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【Side 和緋】 季節外れにやってきた転入生は容姿も態度も、回りとは全く違っていた。 一言で表すなら『純粋』 それがよく似合う様な子。 「お前、そんな笑い方してたら友達できないぞ!!!」 初めて会った彼は俺に向かってそう言った。 その言葉が暖かくて、彼の眼差しに本当の笑みを見せていた。 それから彼が気になり追いかけているうちに仕事をしなくなった。 恋人の輝雅はなんでも1人でこなせる完璧人間。 仕事だって他の役員の分までしっかりこなしている。 彼に俺は必要ない。 でも、海は1人にしておけない危うさがある。 だから俺は海を選んだ。 嘘をついた。 恋人なんかいないって。 輝雅の気持ちも考えずに、無かった事にした。 別れを告げることもせず。 その時はその方がいいと思ってしまったから。 その後彼を見れなかった。 彼に言われるがまま、海を連れて生徒会室を後にすると、それ以来そこに近づかなくなった。 忘れていたんだ。 何故君を完璧人間だなんて思ったのだろう。 忘れてはいけないコトがあったのに。 俺が注意して見てなくてはいけなかったのに。 俺がバカだった。
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