[2]さよならが言えなくて

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【Side 和緋】 生徒会室に足を運ばなくなって1ヶ月以上がたっただろうか。 あれ以来輝雅を見ることはない。 きっかけは海の言葉だった。 「なぁ、最近輝雅どうしてるんだッ!!!全然見ないけど」 「「かいちょーはきっとセフレ君と遊んでるだけだから大丈夫だよ」」 冗談で返した双子の言うことを信じて、セフレはダメだッ!!!と輝雅に会いに生徒会室に向かってしまった海。 一般生徒は入れない場所なため、仕方なくついていく。 「輝雅!!!来てやった………、あれ?」 鍵が開いていたため、海が勢いよくドアを開ける。 中に輝雅がいると思ったが、そこに人影はなかった。 たまたま席を外しているのかと奥に進めば、山積みになった書類が目に入った。 その書類を見て違和感を覚える。 一番上のそれは提出期限をとっくに過ぎていたのだ。 いくらなんでも、あの輝雅がこんなにわかりやすいところにある書類の提出期限を守らないなんて考えられない。 「本当に遊んでたりして」 俺の横から輝雅の机を覗いた会計が呟く。 本当に遊んでいるのか? あの輝雅が仕事をサボるか? 第一、彼が仕事をしていなければ、ここ1ヶ月この学園は成り立っていない。 俺らのこの平穏な暮らしがあるのは、輝雅のおかげ…… 今更ながらそれを理解する。 その時、不意に部屋の扉が開き、廊下の生ぬるい空気が入ってきた。
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