[2]さよならが言えなくて

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【Side 和緋】 部屋に入ってきたのは風紀の副委員長、崇野疾風。 「ここでなにを…?」 「ここは僕たち生徒会の部屋ですよ。居るのは当然でしょう」 彼の問いかけに、さも当たり前のように答える。 人前用の、"副会長"としての自分で。 「『僕たち』生徒会の部屋だって?」 俺の答えに噛みついてきた崇野。 「何かおかしな事でも?」 こちらも屈せず返す。 「お前ッ!!!!!」 いきなり凄い勢いでやってきた崇野が俺の胸ぐらを掴み叫ぶ。 「自分らが何をしたかわかってるのかッ!!!!!お前らのせいで…お前のせいで早乙女はッ「崇野君」」 そこにいた全員が唖然とする中、彼の言葉を遮るように制止した、思いもよらない声。 理事長…? なんで。 「早乙女君が目を覚ましたらしい。今から行くけど君も行くかい?」 理事長が小声で話したその言葉はしっかりと俺の耳に届いていた。 「それ、一体どういう………」 頭で考える前に言葉が出る。 「お前には関係ない」 すぐさま発せられた崇野の声。 『関係ない』 その言葉がズシリと俺の心に伸し掛かる。 そんなこと言われるとは思ってなかった。 だって、俺は輝雅の……………… 輝雅の………? ……………? 今の俺は輝雅のなんだ………? 恋人? だなんてもう言えない。 彼との関係を無かったモノのように切り捨てたのは俺自身。 でも、俺は彼の病気を…… そこでハッとする。 病気…… そうだ。 彼には最大の欠陥があった。 俺はそれを知りながら…… 仕事を押し付けた。 彼が忙しさに追われて体調を崩したのだとしたら。 薬を飲む暇もなかったのだとしたら。 結果、彼は今ここにいない。 大変な事をしてしまったという思いが、脳から全身に広がる。 俺は一体なにをしていた。 何故俺は、輝雅の側にいなかったんだ……
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