[2]さよならが言えなくて

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【Side 疾風】 早乙女が倒れてから1週間。 彼は目を覚ましただろうか。 彼がいない生徒会室は、主を失ったように寂しさが広がっていた。 処理されない山積みになった書類。 提出期限が切れているものもあるだろう。 訪れることのない他の役員は、きっと早乙女が倒れた事を知らない。 もちろん、全校生徒によって公認されていた早乙女の恋人で副会長の柳瀬和緋も同じく。 彼は一体何を考えているのだ。 恋人を放って転入生を追いかけ回して。 もう早乙女の事が好きじゃないのか? それとも初めから好きではなかった? いや、それはない。 転入生が来るまでは、周りを寄せ付けないようなオーラを出し、自分から近くに寄り添っていた。 独占欲丸出しで、嫉妬だってしているように見えた。 それなのに何故……… そんな事を考えながら向かった生徒会室の扉を開ける。 今日も誰もいないと思っていた生徒会室。 そこには、早乙女以外の生徒会役員と一般生徒なはずの転入生が揃っていた。
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