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「な、なぁ、そう言えばみんな恋人とかいるのか?」
そう尋ねたのは転入生。
心なしか緊張しているようにも聞こえた。
「今まで特定の奴は作ったことねーからなァ」
「「僕たちも今までは2人でずっといたから、ねぇー」」
「「「でも海は特別」」だ」
上から酒場、池上兄弟。
そして声を揃えて3人で。
和緋は何か考えているように間を空けた。
「和緋は!?」
「「カズ君はねぇ~「いませんよ、恋人なんて」」」
双子の言葉を遮るように発せられた和緋の言葉。
なんだよ、それ……。
和緋に睨まれ口をつぐんだ双子はニヤニヤと笑っているが隠せていない。
「輝雅は!!!?」
何メートルも離れているわけではないはずなのにすごく遠く感じる。
背を向けた和緋。
「煩い」
「え?」
静かに呟いた俺に転入生が聞き返す。
「煩いから出てけ。仕事の邪魔だ。お前らも、仕事しないならそいつ連れてさっさとどっか行け」
何かが切れた気がした。
「「なーにー、急にィ」」
茶化すように笑いながら言う双子。
もはや隠す気ないだろ。
「海はただ聞いただけだろーがよ。怒鳴るこたねーだろ」
転入生を庇うように睨み言う会計。
「……仕方ありません、行きましょうか」
振り向きもしない和緋。
そのまま転入生の手を引いて出て行った和緋に続いて部屋を去る双子と会計。
ドアが閉まると同時に脱力し、胸の痛みが襲う。
俺の日常は崩れた。
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