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「かず、ひ……」
ドアを思いっきり開けて入ってきたのは誰だったか。
涙で霞む目では誰だかわからないけど、そのままその名を口にした。
その名を呼んだ。
記憶が重なった。
中学生の時と。
ただ忘れていただけなのか、それとも蓋をしていたのか。
あの時助けてくれたのは和緋だった。
名前も知らない、まだ付き合う前。
彼との出会い。
“初めまして”
中2で同じクラスになって挨拶をしたのが最初だと思っていた。
通りでこの時変な顔をしたわけだ。
“僕は輝雅の事が好きです。僕があなたを守ります。だから、ずっと一緒にいましょう”
そう言われた時は驚いた。
中2の終わりだった。
“和緋に守られなくたって俺は大丈夫だよ”
最初はそう言って断った。
けど、和緋は諦めるどころか、余計くっついてくるようになった。
その気持ちに負けたのだと思っていた。
でも、俺はきっと最初から彼が好きだったのだ。
忘れていただけで。
助けられたあの時から。
ずっと。
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