[4]伝えられる想い

31/46
872人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
「かず、ひ……」 ドアを思いっきり開けて入ってきたのは誰だったか。 涙で霞む目では誰だかわからないけど、そのままその名を口にした。 その名を呼んだ。 記憶が重なった。 中学生の時と。 ただ忘れていただけなのか、それとも蓋をしていたのか。 あの時助けてくれたのは和緋だった。 名前も知らない、まだ付き合う前。 彼との出会い。 “初めまして” 中2で同じクラスになって挨拶をしたのが最初だと思っていた。 通りでこの時変な顔をしたわけだ。 “僕は輝雅の事が好きです。僕があなたを守ります。だから、ずっと一緒にいましょう” そう言われた時は驚いた。 中2の終わりだった。 “和緋に守られなくたって俺は大丈夫だよ” 最初はそう言って断った。 けど、和緋は諦めるどころか、余計くっついてくるようになった。 その気持ちに負けたのだと思っていた。 でも、俺はきっと最初から彼が好きだったのだ。 忘れていただけで。 助けられたあの時から。 ずっと。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!