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「社長、今日はお休みしてくださいと……」
海斗の件が終わり、社長室には俺と久遠の2人。
広い部屋にポツンと置いてある机で仕事に取り掛かると、目の前に久遠が立ち、文句を言ってきた。
まぁ、久遠が俺を心配してるのはわかってる。
でも、これらの仕事を今日終わらせなければならない理由がある。
「わかってるよ。明日……、明日休ませてくれ。予定は全てキャンセルして。書類関係は今日やってくから」
それを聞いた久遠の眉間にシワが寄る。
「社長……」
何かを言おうとしたが、口を閉じ、ため息をついてスマホを取り出した彼はそのまま社長室を出て行った。
きっと予定をキャンセルするという連絡をするのだろう。
その行動に俺はホッとし、視線を窓の外に移した。
久遠の気持ちはわかっている。
何を言いたいのかも。
きっと彼は気が付いている。
俺が明日何をしようとしているのか。
だからあんな顔をしたのだ。
俺は見ていた。
彼が一瞬浮かべた悲しみとも苦しみとも、嫉妬ともとれる表情を。
空はすでに暗く、夜の街はネオンで星のように輝いていた。
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