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二日間の研修を終えて、電車に乗り込もうと電光掲示板を見れば、
"雪の影響により、通常よりも運行が遅れております"
の文字が流れた。
律儀に起きて待っているであろうアイツのために、メールを打った。
無題で、待たずに先に寝てていい、という趣旨を簡単に打ち込み、送信ボタンに手をかけた。
ふと、アイツが寂しがりやで甘えただったことを思い出し、タイトルを打ち込んだ。
"ごめん"
アイツと会わなければ、仕事以外では使うことがなかったであろう、謝罪の言葉。
なんせ、ろくに挨拶もお礼もできないやつだからな、俺は。
だからこそ、素直で純粋なアイツに惚れたのか、と今では思う。
いつも送ればすぐ返ってくるメールが、一向に送られてこない。
…拗ねてんのかな、めんどくせぇ。
なんて心の中で毒づきながらも、車窓に映る自分の顔は緩んでいて、思わず失笑した。
しばらく揺られ続けて、降りた時間は雪の影響を全く感じさせられないものだった。
しかし俺は家路とは正反対の方向へと、タクシーで向かった。
向かっているのは高校時代の友人の店だ。
チリン、と鐘を鳴らして扉を開けば、アクセサリーショップを営む友人が笑顔で出迎えてくれた。
「いやぁ、お前から久々に連絡があったと思ったら……、彼女、可愛い?」
「…ニヤニヤしながら人をおちょくってくるところは相変わらずだな。
……で、あれは?」
どうなんだよ!と肘で小突いてくる奴を無視して、例のものを要求する。
「ふぅん、それが、閉店時間すぎてんのに、店を開けてやってる友達に言うセリフ?」
ジトっとした目で睨んでくるので、ため息をついて、小さく白状した。
「………可愛いよ、ものすごく。」
言った途端に、ギャーギャー騒ぎ出したヤツを殴った俺は悪くない。
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