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その日は時間の経過が遅く感じられた。
手術は昼の二時からで、今はようやく一時を過ぎた所。
何かを考えては、時計を確認することの繰り返しだった。
もしかしたら私は明日生きていないかもしれない。
そう思うと、怖い。
でも、こんな大切な日に心配して来てくれる人も居ないのだから、死んで良いのかもしれない。
もう生きていても辛いだけだ。
自暴自棄になっていた、その時。
二回扉がノックされた。
手術の準備の為に看護師さんが来たのかもしれない。
「どうぞ」
「失礼します」
扉越しに聞こえてきたのはやはり看護師さんの声だった。
彼を待っていた時に、病院の外まで一緒に着いてきてくれた人。
彼女なら私の死を悲しんでくれるだろうか。
ゆっくりと扉が開く。
「手術の準備で…………!」
顔を上げると、看護師さんの後ろにもう一人居た。
「どうして……」
「間に合ってよかった」
大好きだった彼がそこには居た。
私が去年プレゼントしたマフラーをしている。
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