余命半年

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「……私が欲しいって言っていたこと覚えていたの?」 「忘れるわけないだろ」 涙がこぼれ落ちた。 誰かに必要とされる喜びを久しぶりに感じた。 「結婚して下さい」 「でも……っ、私は今日死ぬかもしれない!」 「知っている。それでも良い。俺には君しか居ないんだ」 彼は私を優しく抱き締めた。 いつの間にか看護師さんは居なくなっている。 「今まで来れなくて、本当にごめん。毎日待っていてくれたこと、あの看護師さんから聞いていたんだ。寂しかったよな」 「……寂しかった。でも、良いの。今ここに居てくれるだけで私は幸せだから」 これ以上私は何も望まない。 「この指輪受け取ってくれる?」 「……ごめんなさい。受け取れない」
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