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私の職業は警察官だ。
所属している課の仕事の関係で基本内勤が多いけれど、パレードやイベントにはいつも駆り出される。
当初の希望とは別の課に配属されたが、それでも誇りを持って職務にあたってきたつもりだし、イベント事も嫌いなわけではない。
しかし、これはいかがなものか。
今日ほど自分の配属された課を嫌に思ったことはかつてない。
“ キミ、申し訳ないんだけどお茶入れてくれない? ”
そう声をかけられたのは数分前のこと。
まだマスコミも来ておらず、至極穏やかな空気が漂う中で突然そんな言葉をかけられた。
「…はい?」
「なんか“ 署長 ”って感じしません?
お茶、お願いしまーす」
へらりと笑った整った顔に、普段よりもカッチリまとめられた髪。
この男の名前は、咲山真(さきやままこと)。
“ 咲真(さくま) ”という名で俳優をしている。
どうしてこの男の本名を知っているかというと、まあ…いわゆる恋仲ってやつだからだ。
「あの、お茶ならば庶務の方が先ほど」
「打ち合わせ中はお茶飲まない主義なんだ。だからさっきのは飲まずに置いてきちゃった。新しいの欲しいな、キミに入れてほしいんだけど?」
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