社交界の華

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この人の顔には、例えばやや厚すぎる下唇だとか、ふとした瞬間に三白眼気味になる目だとか、一見して美人の典型から外れる特徴が少なくない。 身に着けている衣装やアクセサリーにしても、パーティ会場に集まった女性たちの中では、むしろ大人しめの部類だ。 にも関わらず、黙って腰掛けているだけで、まるでシャンデリアを燈したように、そこの空気が明るく彩られて見えるのだ。 それが本物の皇女であるが故の輝きなのか、それとも、皇女を完璧に演じ切る女優としての華やぎなのかはすぐ近くで眺める僕の目にも判然としない。 だが、もし、ポーランドの貧しい農家に生まれた女工という噂が本当だとしても、汗や泥まみれの労働の中に埋もれさせるべき存在だったとは思えなかった。 というより、この人が貧賤に育ったとしても、「生き残った皇女」とはまた別な形で掬い上げられて、ここにいた気がしてくる。
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