社交界の華

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「こちらにいらしたんですね!」 聞き覚えのある声に振り向くと、サイのように丸々肥った体にまるで軍人の勲章みたいに宝石で飾り付けたドレスを纏った中年の女が立っていた。 この人はこの前、うちの店に来た銀行家の奥さんだ。 「随分、探しましたわ」 頭取夫人は香水の点け過ぎでむせ返りそうなローズの匂いを撒き散らしながら、まるで他の人間を押し退けるようにして、腰掛けている彼女に直進していく。 「お久しぶりです」 彼女が苦笑気味に会釈すると、頭取夫人はこれまたサイそっくりの肥った顔いっぱいに笑顔を浮かべた。 「ええ、もう本当にご無沙汰してましたわ! 今日は主人と子供たちも来ておりますので……」 頭取夫人はさながら機関銃のように喋り始めた。
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