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でも、僕は自分の目でこの人が本物だと見極めるまで、跪いたりしない。
むしろ、彼女が真に皇女であっても、自分だけは抗したい気がした。
ここは自由と平等の国だ。
僕は父さんや銀行家の奥様みたいに、高貴な血筋を崇めたりなんかしない。
大体、皇帝の娘だから、それが何だ?
生まれしか誇れるものがないのなら、偽物と変わらない。
父さんが別の部屋に挨拶に行くのを横目に、僕は知らず知らず拳を固く握り締めていた。
ふわりとラベンダーの香りが鼻先を撫でる。
優しい花の匂いを後に残しつつ、すらりとした後姿が廊下に消えていく。
今だ!
僕は彼女の後を追った。
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