第32話ーLion Heartー

11/13
前へ
/579ページ
次へ
血が、溢れ落ちた。 ピチャチャ、 「っ……」 友に刃をかけた、その現実が堪らなく光輝の心を締め付けた。 (すまん、大輔…!) くきっ。 謝罪の呟きも、謎の音に取り止めさせられた。 (…?) 「ききっ、ききききひぃっ、くっひひひひひぃ…!」 否、違った。大輔の笑い声だ、それも何か感情を必死に押し殺していた薄気味悪い笑い声。 「くぅ、エハハハハハハハハァ!!」 その場にいた学生達は、春に簡単なオーガ討伐の任務を請け負った時を思い出した。 「弱い、クセに…邪魔すんなよ…」 ギュワ。 大輔が、視界から消えた。 「っ!?」 (どこに…?) そうして、光輝の左側に突如として莫大な魔力濃度の塊が現れた。 「極限集中、一点特化…」 ゾァ、 ブツブツと何やら溢し拳を構える大輔に、光輝は戦慄した。 (こいつ、誰だ…!?) 「【極拳】!!」 殺戮行為を、ニヒルに笑って行う彼の顔は、正直言って誰なのか分からなかった。 ゴズン。 「っあが…!!」 意識が飛びそうな程に頭部を殴り飛ばされ、その一瞬の映像で何とか大輔だったのだと視認できた。 ドゴゴガァンッ!! 「光輝くん!」 「朝原ぁ!!」 強い、今の大輔はそんな言葉では生温い程に強くなっていた。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2625人が本棚に入れています
本棚に追加