22.恋人

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 * 自室とは違う天井の壁紙を、ボンヤリした頭で見つめていた。 緩いエアコンの音をかき消す様なリズミカルな音。 そのトントンと響く、小気味よい音にチラリと目を向ける。 檜はふっと頬を緩めた。 淡いパステルカラーの空間に、彼女の姿はあった。 ピンク色のエプロンを身に纏い、キッチンに向かっている。 良い目覚めだな、と思った。 檜は静かに上体を起こし、そろりと布団から抜け出した。 途中立てた、ベッドの軋む音で幸子は振り返る。 「あ…。檜、起きたんだ? おはよう」 「…はよ」 服に手を入れ脇腹をポリポリと掻く。 「いま朝ご飯作ってるから…。あ。和と洋、どっちにしようか迷ったんだけど。洋食でも良かったかな?」 「うん…何でも食う」 「そっか。あと、お風呂も沸いてるから、もし良かったら」 再び背を向けた彼女に近付き、そっと手を回す。 「な…なに?」 後ろから抱きしめられた拍子で、彼女はビクッと肩先を揺らした。 「…うん? いや、夢じゃないんだなーって実感」 ふんわりと流れる彼女の髪に鼻を埋めると、クスクス笑うのが伝わる。 「やべ…。幸子すっげーいい匂いする。何かつけてんの?」 一瞬香水かと思い、そう訊ねた。
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