22.恋人

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「それに…っ。あなたのは単に憧れみたいな、一時的なものだと思ったし。…おまけに生徒だし」 檜から目を逸らすと、幸子はゴニョゴニョと言葉を濁した。 檜はゆっくり手を伸ばし、キュッと幸子の鼻をつまむ。 「きゃっ?! え?? なに」 「勝手に決めつけんなって」 「檜…」 「あん時、俺がどんだけ傷付いたか」 ワザとらしくため息をついてみる。 「…ごめん」 檜は彼女を見つめ、ふっと頬を緩めた。 「俺さ。自分の気持ちにはかなり自信あるつもりだけど…?」 「…ん」 「だから目移りとかつまんねー事考えんな」 幸子はぎこちなく笑い、うん、と答えるとそのまま俯いた。 その仕草に疑問を感じ、首を捻る。 少しの沈黙の後、彼女は眉を下げたまま不安げな目を向けた。 「…水城さん、は?」 「え…?」 「前に付き合ってないって言ってたけど。それなりの事はしてたんでしょ…?」 (あ…) グッと言葉に詰まった。 そうか、その問題が有ったのかと気付く。 幸子にはあの失態を見られていたのだ。 無言になる檜の反応を見て、彼女の瞳ににわかに涙が溜まる。 「…うん」 その目から視線を逸らさず小さく頷いた。
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