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傷付いた彼女は再び俯いてしまう。
檜は眉間を歪めた。
見苦しく言い訳をするのは憚られたが。
包み隠さず、順を追ってちゃんと話そうと思った。
高1の時から奈々との関係を始め、やがてはそれも煩わしくなった事。
あの賭けの話でその関係を終わらせた事。
美波との仲を疑った奈々に条件を出され、それを受け入れた事。
途中、奈々との関係を既に知っていた幸子に驚かされた。
「そうなんだ…?」
幸子を好きでいながら、奈々にキスした経緯を述べると、彼女は悲しそうに無理やり微笑んだ。
「…ごめん」
檜は俯き、そう短く謝った。
それに対して彼女はううんと首を振る。
「…過去の事を…。責めるつもりは無いの」
「…え」
(そうなんだ…?)
パッと顔を上げ、彼女を視界に入れる。
「過ぎてしまった事は…どうにもならないもの。
ただ…あたしが言いたいのは…。不安にさせないでって事だけ」
(不安に…?)
幸子を見つめたまま若干、眉をひそめた。
「だってあたし達…。8つも年が離れてるんだよ? お互いの環境だって、全然違うし…価値観も違う」
「…うん」
「ただでさえ簡単にすれ違いそうなのに…。檜があたし以外の女の子と仲良くしてるの、見るのやだよ」
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