22.恋人

17/22
前へ
/402ページ
次へ
ハンドルを握る彼女の隣りで、檜は車窓に目を向けた。 あの後。 謝る事ばかりで情けなかったが、檜は幸子に対して後ろめたい思いも告白した。 不可抗力とは言え、日記を見た事だ。 しかしそれに関して幸子はそうなんだ? とはにかみ、別にいいよ? と笑った。 「どうせ檜の事しか書いてないし…。むしろ読んで貰いたいぐらい」 と言う。 本気なのか冗談なのか、読む? とあのノートを差し出され、唖然とした。 檜は首を振り、それをやんわりと断った。 そういうのは何か違う気がした。 彼女の本心が知りたければ直接その口から聞けばいい。 もうただの他人じゃない。 ‘彼女’なのだ。 「…ねぇ?」 「ん…?」 不意に声を掛けられ、ピクリと反応する。 「さっき話してて…気になってた事だけど」 幸子は言いにくそうに口を結んだ。 「おう…、何でも言えよ?」 「…ん。檜は、笑いそうなんだけどね?」 そう前置きされ、既に顔が緩む。 「…あたし、水城さんの他に…。美波にも嫉妬したの」 「……。は…??」 「もう、やだ…っ。 絶対そんな反応すると思った」 目が点になる檜に、幸子は赤面する。 「いや、だって…。普通に意味分かんねーし」
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加