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「だけど大人であり、教師である桜庭先生は…最初、ちっとも相手にしてくれなくて…。
時にはハッキリと拒絶される事もありました」
続けざまに喋る檜に、彼らはやがて口を噤む。
檜の身も世もない潔さに、気付いた時には誰も何も言わず、生徒達は一心に耳を傾けていた。
「教師だから、生徒だから、と…。あの時先生の取った態度は、世間一般では正しいかもしれない。
皆の今の反応も…。それが普通かもしれない。
でも人の感情なんて…そんな理屈じゃないだろ?
先生は自分の立場が危うくなるかもしれないのに…
その感情のままに、俺を選んでくれたんだ」
幸子は顔を真っ赤に染め、俯いていた。
檜はスゥッと息を吸い、声を張り上げる。
「それのどこが悪い…!?
教師とか生徒とかそんなのを前に、俺らは一人の男と女なんだ!
ただ純粋に想い合って付き合っただけなのに、これの何がいけないんだよ…!?」
ストレートに想いを告げた所で、何も変わらないかもしれない。
包み隠さず開き直った事で、状況は更に悪化するかもしれない。
けれど、今までふたりが築き上げた、たった10ヶ月の時間を否定したくない、確かに俺たちは真剣に愛し合っていたんだ、と。
檜は真摯に告げた。
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