22.恋人

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コップの中を見てあれ? と思う。 「これ…、フォンタグレープ?」 「うん。秋月くん、好きでしょ?」 「…うん」 そうだけど、とひと口中に含む。 (俺、言った事あったっけ…?) 首を捻りながら考えていると、その様子に気付いたのか幸子が言った。 「カイくんが教えてくれたの」 グラスに口を付けたまま檜はツイと目を上げた。 幸子はニコニコと笑っている。 (そっか…カイが) そこでハタとある記憶に思い当たった。 「そっか! あのバイトの差し入れ、もしかして先生??」 「ぴんぽーん!」 彼女は人差し指を立て、きゃらきゃらと笑った。 変だと思っていたのだ。 あの日、何気なくカイに礼を言うと違うと否定され、思い当たる別の誰かを考えてみたが。 そんなまどろっこしい事をする奴は周りにいない。 檜はなんだ、と呆れて息をついた。 「誰からか分かんねーから…俺、飲んだ事後悔してたんだよ」 「アハハっ、そうなんだ?」 「…。良かった、先生で」 空になったコップを彼女にハイと渡すと、幸子は何か言いたげに口を開いた。 「…それなんだけどね?」 「ん?」
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