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コップの中を見てあれ? と思う。
「これ…、フォンタグレープ?」
「うん。秋月くん、好きでしょ?」
「…うん」
そうだけど、とひと口中に含む。
(俺、言った事あったっけ…?)
首を捻りながら考えていると、その様子に気付いたのか幸子が言った。
「カイくんが教えてくれたの」
グラスに口を付けたまま檜はツイと目を上げた。
幸子はニコニコと笑っている。
(そっか…カイが)
そこでハタとある記憶に思い当たった。
「そっか! あのバイトの差し入れ、もしかして先生??」
「ぴんぽーん!」
彼女は人差し指を立て、きゃらきゃらと笑った。
変だと思っていたのだ。
あの日、何気なくカイに礼を言うと違うと否定され、思い当たる別の誰かを考えてみたが。
そんなまどろっこしい事をする奴は周りにいない。
檜はなんだ、と呆れて息をついた。
「誰からか分かんねーから…俺、飲んだ事後悔してたんだよ」
「アハハっ、そうなんだ?」
「…。良かった、先生で」
空になったコップを彼女にハイと渡すと、幸子は何か言いたげに口を開いた。
「…それなんだけどね?」
「ん?」
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