43.終息

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「あなたと…」 か細い声が耳に届き、檜は口を結んだ。 「あなたと一緒だと…。 あたしは幸せになれないの」 「え…?」 瞬間、頭の中が真っ白になり、そう呟いていた。 「…さっき檜が言った様に、あたし達のした事は間違ってないって。 周りを強く言い聞かせても、世間はそうは見てくれない」 「…で、でも。そんなのっ。 ふたりで学校を辞めてしまえば、関係なくなるんじゃ」 「あたしが教師をしてたって過去は…っ! 誰にも書き換えられないものっ!」 だけど、と再び顔を歪めてしまう。 幸子の口からそんな正当な意見など、聞きたくなかった。 振り返った幸子は、最早泣き顔じゃなかった。 感情が読み取れず、真顔で檜を見返してくる。 だから、と彼女は重い口を開けた。 「あたしの事は…。  もう忘れて下さい」 「…っ!!」 目を見開き、檜は言葉を失った。 「こんな形で裏切る事を、 許してなんて言わない…っ。だけど」 「…」 「…もう。   疲れたの」 そう言って幸子は俯くと、静かに背を向けた。 ゆっくりと去って行く小柄な背を一心に見つめたまま、暫く動けずにいた。 不意に全身から力が抜け、檜はその場に膝をついた。
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