22.恋人

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その格好で幸子をギュッと抱きしめると、胸の奥に甘い花の香りが広がった。 「…ごめんね」 幸子は急に悲しげな口調になり、ポツリと呟いた。 「なにが…?」 謝られる事に心当たりが無いのでキョトンとする。 「あたし…。ほんとはあなたが卒業するまで待つつもりだったの」 「…うん。…ん?」 それで何でごめんなんだ? と黙ったままでいると、幸子は檜の胸に顔を埋めた。 「…前に。告白の返事した時、言ってくれたでしょ? 卒業したらもう一度告白してくれるって」 「うん」 「だからその時まで我慢しようって決めてたの…なのに自分の気持ち、抑えらんなくて…」 彼女が自分の立場を気にしてるんだという事は分かった。 「俺は幸子とこうなれて嬉しいよ? それに俺、バレない様に気をつけるし」 幸子はううん、と頭を振る。 「あたしは結局自分の事しか考えて無いの。 あたし達の関係が世間にバレたら…。あたしは自分から教師を辞めれば良いけど…あなたは退学になるかもしれない。 檜の将来に傷がつくかもしれないって分かってたのに…っ。あたし…」 そういう事か、と息をつく。 (だから‘ごめん’…か)
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